カスタマージャーニーとは、顧客が製品やサービスを発見し、購入、利用、継続/再購入するまでの過程全体を表すマップです。顧客の視点から行動や感情を理解することで、それぞれの過程での顧客とのタッチポイントを最適化したマーケティング施策を打ち出すことが可能となります。
カスタマージャーニーを通じて顧客の心理と行動を理解することは、顧客のニーズや要求あるいは購入に至るまでの過程での障害を把握し、適切なコミュニケーション戦略を立てるために重要です。特に競合他社の多いファッション業界では、何が購入意思決定に影響を及ぼすのか詳細を知る必要があります。 そこで本記事では、顧客がどのようにファッションブランドを選定し、購入しているか、何が購買意思決定に影響を与えているかを、時系列ごとに視覚化できる「カスタマージャーニー」についてお伝えすると共に、カスタマージャーニーに与える影響をご紹介します。
カスタマージャーニーとは?
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを購入するまでの体験を旅(ジャーニー)にたとえたものです。SNSや、雑誌などでの認知からWebサイトなどでの比較検討まで、顧客は購入までに複数の接点を経験します。カスタマージャーニーのマップを作成することで、顧客の行動や心理状態を把握し、適切なタイミングでマーケティング施策を展開することが可能となります。
カスタマージャーニーは、直線的に進むことはほとんどありません。消費者は、購入までの道のりにおいて、さまざまなソース、チャネル、メディアタイプの複数のタッチポイントを通過します。例えば、ある消費者がElle.comの記事でブランドのことを知り、Camila Coelhoのメイクアップ・チュートリアルを見たり、Chiara Ferragniのスポンサー記事のようなインフルエンサー・マーケティングによってファッションのインスピレーションを得たりします。そして、そのブランドのソーシャルメディアのアカウントをフォローし、気になった新しいリップグロスや靴、ニットなどを購入するという旅が続きます。 これらのやり取りの一つ一つが、彼女の購買意思決定に影響を与えています。その結果、ブランドは効果的なマーケティングプランを作成するために、認知、検討からコンバージョン、リテンションまで、カスタマージャーニーに影響を与える5つの異なるボイスを理解する必要があります。 ボイスとは顧客の購入意思決定、消費に影響を与えるチャネルのことを意味します。 ボイスを理解することで、カスタマージャーニーに実際に影響を与えているものが何かを具体的に知ることが出来ます。また、何かを知ることで最も効果的なボイスに広告などの予算を振り分けることが可能となり、投資意思決定に役立ちます。
メディア|メディアアウトレットや出版物
メディアとは、VogueやElle、Manrepeller.comなどのメディアアウトレットや出版物を指します。伝統的なメディアは、もはや紙媒体だけではなく、オンラインやソーシャルメディア上の複数のデジタル事業体を擁しています。これには、紙媒体とオンラインの両方のプロパティ、および各タイトルのソーシャルメディアのアカウントが含まれます。特に、個人がコンテンツを消費する場所に適応していく上で、メディアはブランドの認知度を高める上で重要な役割を果たし続けます。2018年に業務を全面的に見直したGlamour誌は、デジタルと動画のチャンネルに集中するため、定期的な紙媒体の出版を中止することを発表しました。
セレブリティ|俳優、歌手、スポーツ選手
セレブリティは、ブランドの話題を大規模に提供するのに適した存在であり、それは今も変わっていません。セレブリティとは、俳優、歌手、スポーツ選手など、デジタル上の存在以外の部分でよく知られている人たちのことです。例えば、コーチがセレーナ・ゴメスとコラボレーションしたように、ファッションブランドは、消費者の目に映る自分たちのイメージを刷新するためにセレブリティを利用しています。コーチは、セレーナ・ゴメスとのコラボレーションにより、フォロワー数を前年比で約50%増加させました。これは、ジジ・ハディッドがTommy Hilfigerのために行ったカプセルコレクションのような、同様のパートナーシップにも反映されており、ブランドをより若々しくリポジショニングし、売り上げを伸ばしました(ジジはその後、同ブランドで4つのコレクションをデザインしています)。
インフルエンサー|信頼性で知られる個人
インフルエンサーは、最新でありながら、潜在的に最も価値のあるボイスのひとつです。インフルエンサーとは、デジタル上での存在感と、ターゲットとするオーディエンスからの信頼性で知られる個人のことです。インフルエンサーは親近感があるため、信頼できる本物の方法で製品に関する会話を促進し、ブランドがターゲットとする消費者と永続的な関係を築くことができます。インフルエンサーは、あなたのメッセージを増幅させるだけでなく、ショッピング可能なコンテンツや特別なプロモーションを通じてコンバージョンを促進することができます。
インフルエンサーは、そのフォロワー数に応じて4つの階層に分類されます。マイクロ(フォロワー数1万人〜10万人)、ミッドティア(フォロワー数10〜50万人)、メガ(フォロワー数50万〜200万人)、オールスター(フォロワー数200万人以上)です。
パートナー|小売
パートナーは、Sephora、Matchesfashion、Farfetchなどの小売パートナーで、ブランドのメッセージをよりハイパーなターゲットに向けて増幅させることができます。例えば、Matchesfashionをフォローしている人は、Olivia Culpoのようなオールスターのインフルエンサーだけをフォローしている人よりも、その製品を購入する可能性が高いと言えます。
オウンドメディア|ソーシャルメディアチャンネル
最後に、オウンドメディアとは、Instagram、Facebook、YouTubeなど、ブランド自身のソーシャルメディアチャンネルに投稿されるコンテンツのことです。Glossierのようなブランドも、ユーザー生成コンテンツに大きく依存してプラットフォームを活性化させ、関係性を構築することに成功し、最終的にはこのニッチなビューティブランドの売上につながっています。
特に、新規顧客を獲得するためのコストは、既存顧客を維持するためのコストの5倍から25倍と言われていることを考えると、オウンドメディアの活用は、顧客を獲得し維持するための素晴らしい方法です。
カスタマージャーニーに一番影響力のあるボイスを見つける
以上のように、消費者のブランドや商品の認知から購買までの行動には様々なボイスが影響を与えています。マーケターは、消費者の購買活動の中で発生する心理を理解し、最も効果的なボイスが何であったのかを分析することで、次のマーケティング戦略策定の際に、どのボイスに最も投資をすべきかを知ることができるのです。
Media Impact Value™を活用してボイス中心なアプローチをとることで、ブランドは、PRやメディアリレーション、VIPやセレブリティエンドースメント、インフルエンサー・マーケティング、リテールパートナーとの共同マーケティング活動、コンテンツやソーシャルメディアなど、さまざまなマーケティング戦略のパフォーマンスを迅速かつ容易に比較することができます。1つの測定指標で、どの戦略が最もブランド価値に貢献しているかを確認することができるのです。
ある大手化粧品会社のチャネルミックスを見たとしたら、あなたならマーケティング予算をどこに投資しますか?
紙媒体がMIV®の11%しか占めていないことを理由にPR予算を削減し、その予算をコンテンツやインフルエンサーのマーケティングチームに移してソーシャルメディアチャンネルを構築する人もいるかもしれません。しかし、これは間違いかもしれません。というのも、メディア出版物は紙媒体、オンライン、ソーシャル・プロパティを網羅しているため、PR戦略によって推進される伝統的なメディアは、実際にはMIVの31%を占めているからです。
様々なイニシアチブの境界線が重なるにつれ、特にスポンサーコンテンツがプレスカヴァレッジを生み出したり、ブランドのオウンドチャネルで再利用されたりするようになると、部署間での壁を取り払い、マーケティングパフォーマンスを全体的に把握することがより重要になります。
ボイス中心のアプローチをとることで、ブランドはどのボイスが最も大きな影響を与えているかをより深く理解することができます。これにより、予算をより戦略的に配分し、投資の効果を最大化することができます。
※本記事は、Lisa Avvocatoにより執筆されたブログ記事の翻訳です。