アスレジャーとスポーツウェアブランドの成り立ちを振り返ると、20世紀に社会・カルチャーの変化による転換期を迎えました。当時、アスレジャーとは、女性がスポーツ観戦をするときに着る快適な服装のことを指していました。1997年のネイションズ・ビジネスでは、アスレジャーを意識したカジュアルな服装のアンサンブルを表現していると説明されています。
それ以来、この言葉は、単にスポーツウェアに似ているというだけでなく、その機能的な目的を果たすために包括的に進化してきました。その上、単に身体を守るためにアスレジャーを着たり、有酸素運動のために通気性の良い素材を着たりするだけでなく、スポーツウェアは衣服のファッション性にも関心を持つようになったのです。ストリートウェアがアスレチックウェアコレクションのデザインやターゲット市場に影響を与えるようになり、20世紀とは逆転したのです。
アスレジャーが今日の市場でこれほど支配的な役割を果たしている以上、各ブランドの立ち位置を理解することは重要です。コンサルティング会社Grand View Research社の「アスレジャー市場規模・シェア・動向分析レポート」によると、2021年のアスレジャーの世界市場規模は307B USDとされ、60%以上のシェアを占めています。さらに、市場調査会社のアライドマーケットリサーチによると、世界のアクティブウェア産業は2024年までに547B USD近くに達すると予測されています。
今日のアスレジャー業界を構成する複雑な市場で地位を維持するためには、ブランドは競合の立ち位置とその成果を認識し、それに応じて戦略を微調整できるようにする必要があります。さらに、これらの洞察を得るための最良の方法は、データ分析です。
その結果、スポーツウェア分野の注目すべき10ブランドのパフォーマンスをベンチマークしました。 当社独自のアルゴリズムであるメディア・インパクト・バリュー™(MIV®)により、選択した期間中のさまざまなボイスにおけるすべてのメディアプレースメントとメンションの影響を測定し、ベンチマークすることができました。さらに、あるブランドが他のブランドより優れている理由と、その成功につながった戦術を深く掘り下げることができました。
この記事では次のことを学びます。
私たちが選んだスポーツウェアブランド10選とは?
今回の競合ベンチマーキングレポートでは、以下のスポーツウェア10ブランドについて、2022年8月1日から2022年9月30日までのMIV®データを分析しました。
- Nike
- Adidas
- New Balance
- Puma
- Converse
- Reebok
- Under Armour
- Lululemon
- Fila
- Athleta
以下のインフォグラフィックは、2022年8月から9月にかけて、選択したスポーツウェアブランドのメディア・インパクト・バリュー™による総合ランキングを表示したものです。また、10ブランドそれぞれが期間内に行ったプレースメントの数も表示されます。これらのプレースメントには、ソーシャルメディアへの投稿、特定の検索クエリ(ブランド、商品、イベントなど)に関連する記事、およびタグやコメントなど消費者が投稿に行ったインタラクションが考慮されています。
下記の2番目の棒グラフは、ボイス ミックス ベンチマークの内訳を示したものです。
このグラフは、消費者が接触する5つのボイスのそれぞれの割合を示すボイス ミックスの指標を表しています。メディア、インフルエンサー、セレブリティ、パートナー、オウンドメディアです。この比率は、各ボイスがスポーツウェアブランドにとって生み出したMIV®の合計に基づいています。
このグラフから得られる注目すべきデータポイントは、支配的な戦略という意味で、ボイス中心のアプローチとして、すべてのブランドにとってメディアが普及していることです。アディダスとアンダーアーマーは、他のブランドよりもパートナーのボイスを活用しているように見えますが、コンバースは単独でオウンドメディアのボイスを多く活用しています。
これらのインサイトは興味深いものですが、それぞれのボイスにおいて、どのようなプレースメントが最も消費者の興味を引くものだったのでしょうか?また、自社ブランドに簡単に適用できる本質的なトレンドや戦略は何だったのでしょうか?ナイキ、アディダス、ニューバランス、プーマ、コンバースはなぜMIV®のランキングで上位にいるのでしょうか?
これら10社のスポーツウェア・ブランドのベンチマークと分析について、詳しくはこちらをご覧ください。
Nike
選ばれたスポーツウェア・ブランドのランキングで上位に入ったのは、多国籍連合のナイキです。著名なアスリートとのパートナーシップで知られるこのブランドは、2022年8月から9月にかけて142Kのプレースメントで$366MのMIV®を獲得しています。
その成功の主な要因は、MIV®全体のうち2億3600万ドルを投じたメディアボイスの活用にあります。オンラインとソーシャル・メディア・チャネルが最も顕著で、InstagramはブランドのMIV®の32%を占めています。注目すべきは、紙媒体がブランド全体のメディア・インパクト・バリュー™にそれほど寄与していないことです。
セリーナ・ウィリアムズを起用したナイキの50周年記念キャンペーン「Never Done Evolving」、ドレイクのライブコンサートでのブランドへの賛辞、あるいは単にブランドの忠実なアンバサダーなど、ナイキは2022年にしばしばメディアに脚光を浴びることになりました。
その結果、ナイキが他のブランドと比較して何が際立っているかというと、その特徴的なスポンサーです。2022年8月1日から9月30日までのナイキのプレースメントのトップ3は、幅広いリーチを持つ著名なアスリートによるものです。クリスティアーノ・ロナウドのインスタグラム投稿はMIV®で231万ドル、キリアン・ムバッペのインスタグラム投稿はMIV®で82万2000ドル、セリーナ・ウィリアムズのインスタグラム投稿はMIV®で67万8000ドルを生み出しました。
ナイキの長期的なパートナーシップは、多大なMIV®を獲得するだけでなく、かなりのソーシャルおよびオンラインメディアの報道をリードすることで、ブランドにとって大きなレバレッジとなっています。彼らの成功は、セレブリティとインフルエンサーの声を中心とした戦略キャンペーンに起因していることは間違いないでしょう。
Adidas
949年にヘルツォーゲンアウラッハの小さな町で誕生した小さなスポーツウェア・ブランドは、今や世界中で認知されるブランドとなりました。このレポートのために選ばれた10大スポーツウェア・ブランドの中で2位となったアディダスは、2022年8月から9月の間に10万6000件のプレースメントで3億4700万ドルのメディア・インパクト・バリュー™を獲得しています。
このランキングの他のブランドと同様に、Adidasは、MIV®全体の49%にあたる1億7100万ドルを独自に獲得し、その成功の多くをメディアボイスによるものとすることができます。しかし、他のブランドと異なるのは、MIV®で$7260Mという印象的なオウンドメディアボイスを獲得している点です。さらに、アディダスのキーボイスのトップはパートナーボイスで、主に中国のソーシャルメディアプラットフォームDouyinでの1010のプレースメントでMIV®で$33.4Mを蓄積しています。
ボイスミックスを考慮した上で、上記のチャネルスプリットの棒グラフを通して、アディダスの戦略をもう少し深く掘り下げることができます。MIV®の約6220万ドルは、中国のソーシャルメディアチャネルのBilibili、RED、WeChat、Weibo、そして最も主要なDouyinを通じて生み出されました。これらのアジアのプラットフォームで持続可能なカバレッジを提示することに成功し、全体として$111Mとなったインスタグラムの優位性も忘れてはならず、アディダスは世界的に競争力のある基盤を確立しています。
アジアのリソースを活用することは、アディダスがすでに成功したステップですが、もう一つ貴重なのは、影響力のあるKOL(キーオピニオンリーダー)を活用することです。BTSが2年連続でIFPI Recording Artist of the Year Award 2022を受賞するなど、K-POPスターの欧米での人気はますます高まっています。他の名高いK-POPグループも同様に人気を博しており、特にBLACKPINKはアディダスの重要なグループスポンサーとなっています。彼らのブランドへの影響力は、アジアだけでなく、世界中のあらゆる地域で圧倒的なものとなっています。アディダスのトップ3は、BLACKPINKのパフォーマー3人のインスタグラムの投稿によるものでした。J、Jisoo、Roséの3人です。ブランドのトップ・プレイスメントとして、Jの投稿はMIV®で144万ドルを生み出しています。
New Balance
ニューバランスは、その名の通り、より良い「バランス」と「サポート」をお客様に提供するために、整形外科用フットウェアの会社としてスタートしました。現在では、スポーツウェアの世界で厳選されたブランドランキングの上位3位に堂々と名を連ねています。2022年8月から9月までに36.4Kの出稿で7980万ドルのMIV®を集めましたが、皆さんは、メディア・インパクト・バリュー™の半分以上である5050万ドルで最も貢献したメディアボイスと読んでも驚かれないと思います。
ニューバランスのメディアカバレッジの成功は、様々なキーボイスでニューバランスが多くのポジションを獲得していることからも明らかです。トップは、Hypebeast USが293件の掲載でニューバランスのMIV®を513万ドル、Sneaker News USが187件の掲載で409万ドルと、かなりの量を獲得しています。それでも、両者のMIV®の最高額は、Hypebeast USのインスタグラム投稿で、$128K MIV®を獲得したのが上限でした。
露出を最適化するために、インフルエンサーのスポンサーシップは素晴らしいマーケティング戦略であり、ニューバランスはナイキやアディダスと同様に、うまく活用したことを示しています。台湾のインフルエンサー千千進食中が彼女のYouTubeビデオでニューバランスXC-72を着用し、ニューバランスにとって2位となり、203KドルのMIV®を獲得しました。
最近では、ニューバランス550コレクションの発売を待ち望む消費者のために、アメリカのラッパー、Jack Harlowとの新しい特別なコラボレーションがブランドの支持を集めました。このアーティストのセカンドアルバム「Come Home the Kids Miss You」の発売を記念して、新しいコレクションに関するJack Harlowの投稿は、MIV®で560Kドルを獲得し、ブランドのトッププレースメントとして1位を獲得しました。
Puma
ドイツのグローバルブランドであるプーマとアディダスは、別会社になったものの、スポーツウェアブランドとしてランキングの上位を維持しています。プーマは、30.4Kのプレースメントで$68.2Mの総合MIV®を獲得し、その成功の多くは、優れたアスリートとのパートナーシップとコラボレーションから得ています。MIV®で$34.3Mと50%を占め、メディアボイスが再び最も顕著なボイスとしてミックスの中に入っています。
プーマは、ナイキと同様に、信頼できる有名アスリートとのコラボレーションの成功例を示しています。プーマのトップはネイマール・ジュニアのインスタグラムの投稿でプーマに101万ドルのMIV®をもたらし、同じくトップはウサイン・セントレオ・ボルトのインスタグラムのリールで38万4000ドルを記録しました。
プーマは、インドの有名女優、Kareena Kapoor Khanを起用した新コレクションを発表することができました。このコレクションは、ブランドにとってのメディアボイスだけでなく、セレブリティボイスも活用しました。これは、ニューバランスとJack Harlowで見られたクロスボイス戦略と同じような出来事です。Kareena Kapoor Khanの2つのインスタグラム投稿は、MIV®で$407Kと$324Kを獲得し、この発売の成功を強調することができます。
複数のプラットフォームでセレブリティのボイスを活用することで、ブランドはMIV®を最大化し、ソーシャルおよびオンラインメディアの露出を増やすことができます。
Converse
コンバースは 1908 年に今日知られている有名なアスレジャー ブランドとしてスタートしたわけではありませんが、業界での成功は否定できません。この成功は、2022年8月から9月の間に、このブランドが13.5Kのプレースメントで4800万ドルのMIV®を集めていることから、このレポートのランキングで強調されています。
コンバースのデータに関する興味深い統計は、オウンドメディアボイスが2,16KのプレースメントでコンバースのMIV®で1410万ドルを集め、プレースメントあたりのMIV®が9.28Kと最も高かったということです。つまり、他のボイスとは対照的に、オウンドメディアの戦略はプレースメントによって最も成功していることがわかります。また、コンバースのキーボイスのトップ10のうち、7つがオウンドメディアとなっています。ただし、メディアボイスはブランドにとって最もメディア・インパクト・バリュー™を生み出すボイスであることは変わりません。
結局のところ、コンバースのオウンドメディア戦略の成功は、ブランド自身のチャネルがインフルエンサーのボイスを活用して露出を最適化する、もう一つのクロスボイス戦略に関係しています。例えば、コンバースとKeemのコラボレーションのプロモーションは、米国でコンバースのオウンドメディアボイスが集めた126万ドルのMIV®に貢献し、大きな成功を収めました。
競合ブランドのベンチマーク方法
このレポートの目的は、一部のトップスポーツウェアブランドがMIV®を最適化するために用いている成功したマーケティング戦略や戦術について、より多くの方に知っていただくことです。
自社ブランドの位置づけや競合との比較についてもっと知りたい場合は、ブランドのパフォーマンスの分析をより深く掘り下げてみる必要があります。このテーラーメイドのデータは、各ボイスおよびチャネルのパフォーマンスを分析することによって、キャンペーンの効果を測定し、また競合他社のものと比較して主要な結果をベンチマークするのに役立ちます。
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※本記事は、Lara Camagniにより執筆されLaunchmetrics(本国)に掲載されたブログ記事の翻訳です。
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